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ショートストーリー <P5.>

※この物語に登場することは、すべてフィクションです。

「運命の輪 (同人誌「睡蓮」4号に掲載)


---つづき---

「その運命の輪が絶対のものならば、この世の中に奇跡というものは存在しないので

か?」

「確かに、奇跡は存在します。しかし、それは、その人の運命の輪にまだ寿命がある

ために起こるもので、あなたが今生きているのは奇跡ではない。生きていけない人

がこの世に存在する限り、災いは繰り返されるでしょう。」

「じゃぁ、私にどうしろとおっしゃるんですか?」

「どうにも出来ません。あなたの運が尽きるまでは。」

「私の運命の輪が巻き込んだ災難が、これからも続くということですか?」

「きっと、そうなるでしょう。」

「でも、まったく関係の無い人まで巻き添えになるなんて・・・」

涙があふれる。

自分のせいで、まったく関係の無い人まで傷付けるなんて、耐えられない。

「いいですか。よく聞いてください。関係の無い人達を巻き添えにしないようにするのも、

わたくし、管理人の役目です。しかし、先程のように、時間を止めて災いを回避出来た

としても、あなたの時間は止めることは出来ません。それは、あなたが生き延びる為の

手助けをすることは、許されていないからです。他の方々の運命の輪は、わたくしが守

らなくてはいけませんが、たびたび時間を止めていては、他に支障をきたすことがある

かもしれません。だから、あなたも出来るだけ大勢の集まる場所は避けてください。」

私は、頷いた。

良かった。

他人を巻き添えにすることが無いと分かって。

こんな運命を呪いたくなったが、少しだけ救われた。

運命の輪の管理人に姿があるのならば、きっと、握手をして感謝の気持ちを伝えて

いただろう。

「ありがとう・・・」

そう言った瞬間、気が遠くなっていくのを感じた。


再び気が付くと、吊革に掴まったまま、うとうととしていた。

さっき出逢った運命の輪の管理人のことは、きっと、夢ではないと思う。

だって、まだ体中が痛いのだから。

あのとき、運命の輪の管理人が言ったように、地下鉄事故は起こること無く、目的の

駅へ着いた。


---つづく---

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